リンカーン大統領でまず思い出すのは「人民の人民による人民のため」という名セリフ。「民主主義とは?」を問われれば、必須の解答だ。
そんな名言を吐き、大統領にも再選され、奴隷解放を目的とした南北戦争も勝利目前。リンカーンの名は歴史に残るはずだ。しかし、彼はあえて、その名声を不意にしかねない大きな障害に挑もうとする。それが憲法修正を議会に承認させることだ。
なぜ彼は憲法の修正にこだわるのか。その理由の説明を含め、彼は多くの人と直接会い、説得を試みる。内閣、与党議員、野党議員、ロビイスト、一兵卒、無線技士、南部代表、家族…、今じゃ考えられないほど大統領のフットワークは軽く、だれにでも、どこへでも出かけていく。しかし、彼の口から発せられる言葉は時折ユーモアも交えるが、重厚で、相手の心を揺さぶる。
この作品でのリンカーンは政治ドラマにありがちな聴衆への感情的な演説を行わない。「人民の人民による」の演説も過去の話だ。密室で当事者との対面会話を重視した影のある男。一人を説得できない男が、国民を説得させることなどできないという信念が、そこにある。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史モノ
- 感想投稿日 : 2013年12月17日
- 読了日 : 2013年12月17日
- 本棚登録日 : 2013年12月17日
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