1970年代、学生運動によって殺伐とする東京。
東京の大学に進学した優秀な姉が内ゲバに巻き込まれ、頭蓋骨を砕かれ殺された。主人公・洋子がその謎を解き明かそうと上京するところから物語は始まる。
尊敬する姉の思想に疑問を感じながらも精力的に活動する洋子だが、次第とその心身ともに衰弱していき…
愛するものを失い、絶望の淵で自らも死に直面し、そのショックから失語症になってしまうという洋子の描写は、痛いくらい鮮烈。
学生運動というヒロイズムに偏りがちなテーマを、「無意味」と一刀両断する姿勢も痛快だ。
団塊の世代が巻き起こした学生運動は、その反動として、その次の世代に、より強固な自由に対する規制を生み出し、張本人らは見事に「転身」した、とする著者。(個人的には尾崎豊が生まれたのもその影響があると思う。)
「ヘルメットがスーツに、手ぬぐいがネクタイに、魔法のように変わっていた」
「農家を扇動し、破壊しようとした飛行場を利用して、世界中に飛び立っていった」
かなり攻撃的な表現(笑
しかし、最後に待ちうける衝撃のラストが、こんな「学生運動がどうの」なんていう議論は吹き飛ばしてくれる。
キャロル・キングの名盤Tapestryに乗せてテンポ良く進む、
愛とは、尊厳とは、自由とは何かを考えさせてくれる青春小説。
短いからおススメです!
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2010年6月7日
- 読了日 : 2010年6月6日
- 本棚登録日 : 2010年6月6日
みんなの感想をみる