小川糸さんの「暮らし」の描写がとても素敵だなーと改めて思う。
谷中の下町風情に溢れる景色の描写もとても素敵。
気持ちの余裕がない時にこういうしっかり丁寧に生活している本が読みたくなる。でもどこか遠い所のお話のようにも感じてしまう距離感が心地よい。
どうしようもなく惹かれてしまう気持ちの描写がなんともせつなかった。どことなく浮き世離れしている道ならぬ恋の描き方だけれども、だからこそ余計にせつない気持ちの描写が際立つように感じた。
ープリンにスプーンを差し込んだ瞬間、もうだめだろうという予感が下。そして、柔らかくて甘いものを口に入れたとたん、涙の洪水がわたしを襲う。心という形がぼろぼろと足元に崩れていくのを、私は他人事にように啞然と見つめているしかできなかった。
プリンの柔らかさと甘さは春一郎さんそのもの。それを受け入れてしまうことへの罪悪感とどうしようもなさ。嘘みたいな事が現実に起こった時の戸惑い。このへんの描写がなんともどうしようもなくてせつなかった。
五感と心がつながるとき、どうしようもなく幸せにも、どうしようもなく悲しくも、なる。
食べる事は生きること
ーまた少し、春一郎さんと私の体が同じもので作られていく。
大切な人とおいしい食事ができる事
同じ時を過ごせる事
そんな、当たり前の事が何より幸せなこと。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年7月4日
- 読了日 : 2015年7月4日
- 本棚登録日 : 2015年7月4日
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