イヴの七人の娘たち (ヴィレッジブックス N サ 1-1)

  • フリュー (2006年11月1日発売)
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「ミトコンドリアは母方のそれを受け継ぐ」という事実から、人類の起源を同定するという研究を、その研究の第一人者である筆者が説明している一冊である。

遺伝子の研究はJ.WatsonとF.CrickのDNA構造の発見を起源とする。
そのなかで人間の23対の染色体は、女性と男性の染色体をちょうど半分ずつ子供に受け継ぐ。
この機構によって、私と他者は違うし人類の多様性を生み出しているのである。
翻ってこの機構・多様性により染色体のDNA配列を解析することで過去に知ることは非常に困難である。
では、過去にさかのぼるための手がかりとなるの何か?
それがミトコンドリアである。冒頭でも記載したとおり、ミトコンドリアのDNAは母親のそれをほぼ完全に引き継ぐ。これをもとに過去を再構成することができるはずだというのが基礎発想である。
この基礎理論を使うためには、ミトコンドリアのDNAの頑健性が非常に重要となる。つまり、数百年単位でDNAが書き換わるような突然変異が発生するのであれば、人類の起源(~数万年)を遡ることができなくなる(突然変異のエラーのノイズが大きすぎてしまう)。
幸い、ミトコンドリアのDNAは非常に突然変異を起こしにくいという事実があるため、この理論を使用することができる。

そして、結論としては現代ヨーロッパ人のミトコンドリアは実は、題名の通り大昔に生きていた7人の女性のいずれかの子孫である可能性が非常に高い。
数億人いる現代ヨーロッパ人のDNAが7人の女性に還元できるというのは非常に驚くべき事実である。
(厳密にいうと、母方の家系を過去まで遡ると上記の7人のいずれかに落ち着くという意味)

余談であるが、上の議論はアダムが実在したということとよく誤解される。
これは別で、上の7人から生まれた子供が、すべての世代に少なくとも1人は女性だったという事実であり、それ以上でもそれ以下でもない。
(それゆえに、このような女性をラッキーマザーと言ったりもするようである)

本書の後半では、その7人に名前を与えて、生活ぶりを空想しているが、まぁFictionとして読めばなかなか楽しめるのかな。。。
本書の前半部分は現代の生物学が解き明かした偉大な事実を理解することができるため一読の価値は十分にある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2015年5月8日
読了日 : 2015年5月8日
本棚登録日 : 2015年5月1日

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