高校生活が始まってから70冊めに読んだ、個人的には記念すべき、思い入れのある本です。2年に1回ほど読み返しますが、毎回「前に読んだときの自分は、全然理解できていなかったな」と思うのです。きっと2年後も読みます。
たくさんの経験が豊かな創造性につながること(音楽家である自分には身につまされるものがあります)、それがどんな運命であろうと自分の使命に従う決意の実行の辛さと幸せ、官能と苦悩の不思議な紙一重…こんなに充実(この言葉を使うのには少々の違和感がありますが)したひとつの人生を覗き見るのは、もはやただの「読書」ではなく「経験」です。私はキリスト教には詳しくありませんが、宗教画のテーマの一つ「放蕩息子の帰還」はこういう意味か、と思ったりもします。彫刻をやってみたくもなります(笑)
高橋健治氏の訳は賛否両論あるようですが、私はヘッセの文章の美しさや誠実な言葉づかいを最も忠実に再現しているように思えて好きです。
ヘッセの長編なら、本書が一番のおすすめです。
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- 感想投稿日 : 2012年3月17日
- 読了日 : 2011年10月2日
- 本棚登録日 : 2011年10月2日
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