「神」という謎―宗教哲学入門 (SEKAISHISO SEMINAR)

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  • 世界思想社 (2007年7月4日発売)
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わが国では、宗教を社会現象として問題にすることは多いが、宗教が主張する内容の真偽を、合理的な議論に基づいて検討することはほとんどない。だが西洋では、神の存在を合理的に証明しようとする努力が連綿と続けられてきた。こうした努力は現在も続いており、20世紀以降、主として英語圏で展開された分析哲学の成果を取り入れての議論がなされている。本書は、こうした英語圏の宗教哲学の教科書だ。

本書は4つのパートから構成されている。第一部では、宗教が主張する内容を合理的な議論に基づいて検討することの意義が考察される。現代の日本では、神や魂や来世などの宗教的な事柄について、二つのタイプの「片付け方」が存在する。一つは、「宗教は科学的ではないので、宗教について考えることには意味がない」というものであり、もう一つは「宗教はけっきょくのところ、それを信じる人の心の問題だ」というものである。本書では、こうした「片付け方」によって、宗教についての合理的な検討を無意味なものとすることはできないということが説明される。

第二部では、「悪の問題」が論じられる。この世には悪が存在する。もし神が存在するのであれば、こうした悪の存在を許容するはずがない、ゆえに神は存在しないという無神論の議論が検討され、悪と人間の自由をめぐる問題が手際よく紹介されている。

第三部では、伝統的な神の存在証明の中から、宇宙論的証明、目的論的証明、存在論的証明が取り上げられ、その現代的ヴァージョンが紹介される。

第四部では、十分に合理的な根拠のない事柄を信じることは間違いだとするクリフォードの議論に基づいて、理性的な立場から信仰を退ける議論の是非が検討される。本書では、現代知識論の信頼性主義の立場が紹介され、理性と信仰の問題が、信念の正当化条件についてどのように考えればよいかという問題につながっていることが明らかにされる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宗教学・宗教哲学
感想投稿日 : 2011年2月24日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年2月23日

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