この間読んだ「天使のナイフ」が被害者遺族の立場から「贖罪」「更生」を考えた作品で、こちらは犯罪者側から見た物語。そしてまたまたこないだ読んだ「悪人」から引き続き、悪人とは何だろう、と考えた。人の命を奪った以上、圧倒的に許されざる立場である殺人犯…の気持ちが理解できるか…。隆太に感情移入しつつ、もし自分の大切な人が被害者になったら…と考えると「-僕は人殺しだ。でも、僕だって人間なんだ。 」の言葉を絶対受け入れられないだろうと思う。隆太が自身の罪深さを認めつつ、ともすると「俺だけが悪いわけじゃない」と思ってしまうところに、人間がきれいごとだけではいかないってことを感じた。小説自体は作者らしいはらはら展開。でもきれいにまとまりすぎかな。ラスト、温かい心に囲まれる隆太。もし、私の大切な人を殺したのが隆太だったら…やっぱりそんなの納得いかないだろう。遺族も立ち直らなきゃいけない。きっと「許し」がキーワードなんだろうけど、難しいな…。…とやはり答えの出ない思考ループに陥る。とにかく殺人事件なんてなくなってしまえ、としか思えない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー(国内)
- 感想投稿日 : 2013年7月1日
- 読了日 : 2013年7月1日
- 本棚登録日 : 2013年7月1日
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