少女外道

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年12月10日発売)
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感想 : 7
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児童文学参加としてデビューし最近はミステリー作家として活躍、文化功労者としても表彰されるまでになっている直木賞作家皆川博子さんの作品『少女外道』を読了。

僕ら戦後世代は全く感じた事がないが、戦時下の重苦しい空気の中でじわじわとその本来は生き生きとしていた生命力を発揮して行く場をけずられて行く少女達が見事に描かれている短編集だ。

ミステリー作家の作品であるが本作はミステリーではない。戦時下に生まれた少女達が許されぬ恋の末に死を選ばざるを得なかったり、プレッシャーにあらがいながらもその悩みを人には言えずに苦しむ少女、欲望がひさやかにわき上がっているのにそんあことはおくびにも出せない時代の中で日々を送る少女などなど、オープンに自分の事を語ったり、進む道を選べなかった時代に苦しんだ女性達の物語が8編収められている。

電話もない、ネットもない、出会いアプリもない時代、かつ戦争というとてつもない化け物が世の中を席巻していた時代に生きたた少女達の心のありようはあまりに脆く、しかし熱く、とても美しい。

親に聞いても語られない戦時下で少女だった人たちの心の叫びを聞く事が出来るのもこういった説があるおかげだ。こういった小説を書く小説家の作品を触れないで生きるのはちょっともったいない。

自分の心に潜むエロスと死のアンバランスな響き合いに導かれ人の求められる道とはちょっとだけ外れて生きる戦時下の少女達のお話を読むBGMに選んだのはBlossan Dearieの"Once upon a summertime". こういう不思議なジャズ歌手もいたんだなあ。
https://www.youtube.com/watch?v=jg_o95Lxzus

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感想投稿日 : 2017年3月18日
本棚登録日 : 2017年3月4日

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