夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書 2200)

著者 :
制作 : 迫田さやか 
  • 中央公論新社 (2013年1月24日発売)
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感想 : 46

再分配所得におけるジニ係数が上昇していることから、日本社会が格差社会になってきていることが言える。従来は所得格差について論ずるとき、個人の所得・賃金が注目され、その家計の核である夫婦間の格差についてはあまり語られてこなかった。以前は「夫が外で働き、妻は家事育児」という形態の家庭が多く、家計所得は夫の所得額とほとんど変わらなかったためである。また妻に関しては、「夫の給料が高ければ専業主婦となって家事に専念し、夫の給料が低ければその収入を補うために妻も働く」という法則が働いており、これが社会全体の家計所得の平等化に寄与していたが、現代では妻が働くか働かないかが、夫の給料とは無関係のところで決まり、妻の所得が家計間の格差を助長しているということが様々なデータから明らかになった。これは、女性労働者にアルバイト・パートなどの非正規雇用労働者が多い一方で、高学歴女性が増加し、専門職や管理職に就く女性もいて、女性間での所得格差が男性よりも顕著なことも理由の1つである。このようなデータ分析結果のもと、本書では、高所得夫婦・低所得夫婦のそれぞれの特性を子供の有無、学歴、職種などの点から考察し、第2章では、どのような男女が結婚して経済生活を共にするのか、経済学的な視点も含めつつ分析した。この際参考にしたデータが、「結婚相手に何を求めるのか」、「どのようなプロセスで結婚に至ったか」、「結婚のメリットは?」といった質問を含むアンケート調査の結果である。夫婦の学歴・職業に関しては、男性が異なる学歴・職業の女性と結婚したり、同じ学歴・職業の女性と結婚したりとまちまちであるのに対して、女性は同じもしくは自分より高い学歴の人や同じ職種の男性と結婚する傾向があることを示しており、これにより所得格差が両極端に位置するパワーカップル・ウィークカップルが形成される。夫婦間格差の経済基準が妻の就業形態、年収によって決められることが言える(夫の経済力に頼る形態、すなわち専業主婦もまだ少なくないので、その場合は別)。
次に「貧困」に焦点を当てると、日本の貧困者の半数以上が高齢者単身世帯や母子家庭に集約される。これには年金で受け取れる額の低さや母子手当の不十分さなど、支援制度の問題もあるが、非正規雇用で働く若者が増えており、賃金が低いことも要因の1つだ。
このほかに本書では、結婚が出来ない人たちや、離婚する夫婦の経済状況や都市と地方の違いにもスポットを当て、広く様々な形態の家計状況の分析をしている。

現代では特に都市で、核家族が増えている背景もあり、「夫婦」に焦点を当てて所得格差について論じていくことは面白いと思う一方で、このような発想が生まれた背景に女性の社会進出がある程度進んだことも挙げられるのではないかと思った。女性が働いて家計に多く貢献することが広く見られるようになったことで、本書のような分析が可能になったと思うからである。男女間の所得格差が未だ大きく開いていることが本書でも述べられたが、これは男女の平均所得の格差であって、専業主婦がまだ多く存在していること、専業主婦でなくとも妻は夫の経済力にある程度依拠しても良いという考え方が未だ根強い中では、平均所得において大きい差が出るのは当然かと思った。しかし、女性が出産のために仕事を中断して再び戻ってくるということがしにくい、できたとしても非正規労働のような賃金の低いものになってしまう、というような問題点はまだまだ解決されていないように思える。母子家庭の貧困率の高さにもその現状が反映されていると思う。

多少の新しい発見もありつつも、図表見れば分かるってとこもあってさくさく読み進んだから、内容的にはそんな濃くない。読書慣れしてる人は物足りないかも。読書慣れワンステップとしてまず積み重ねて達成感を得て原動力に繋げてこうと思った私にはかえって合ってた気がする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年2月2日
読了日 : 2014年2月2日
本棚登録日 : 2014年2月1日

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