チョムスキー入門 生成文法の謎を解く (光文社新書)

著者 :
  • 光文社 (2006年2月16日発売)
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本棚登録 : 196
感想 : 23
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町田さん,生成文法がお嫌いみたいです.生成文法の入門書だと思うのですが,ちょっと紹介しては問題点…の繰り返し.「文というものが何なのか定義できていないと…」とか批判点に挙げるけども,町田さんはそれを乗り越えているのだろうか? 批判的なのはいいけども,建設的でないのはよくない.

能動態と受動態が同じ意味であるという“仮定”や,深層構造では同じであるという想定に対して,「それを事実に基づいて検証することはできない」という批判をしています.この批判がもし妥当なら,物理学の理論は破綻です.質点は事実ですらないので,この仮定に基づいて組まれた理論は,町田さんに言わせると「ちゃんちゃらおかしい」ことになると思うのですが,まえがきで「もし生成文法が,ニュートン物理学や相対性理論のように,本当に正しい学説なのだとしたら,…」と述べていますが,ニュートン物理学は町田さんにとっては「本当に正しい学説」みたいです.批判的な観点というのは大事ですが,町田さんの批判の仕方では,物理学の理論も批判の対象になるはずです.一貫性のない批判はだめです.論理的ではありません.

たぶん,町田さんはモデルとか理論とかを作ったことがないんでしょう.また,理論はあらゆることを説明できなければならないものだという誤った認識をしているように思われます.

追加:2012年3月28日
読み直しても,やはり印象は同じ。僕が生成文法を擁護するかどうかは,生成文法を知ってから決めようとしているけども,町田さんの批判は,“批判のための批判”でしかないと思う。ある2つの文の意味が同じかどうかを,直観に頼って決めるのは問題だ!と批判しつつ,“英語の勉強で習ったから同じだと分かりますよね~”みたいなことも書いていたりする。英語のネイティブでない僕らは,そうやって語学書に書いていることを信用するしかないけど,“同じです”としたのは結局のところネイティブの直観であるはず。それに文句を言っているわけだから,あらゆる語学書に書いていることは根拠がないと主張してくれないと,まともな批判をしているとは言えない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 言語学-home
感想投稿日 : 2009年10月19日
読了日 : 2009年10月19日
本棚登録日 : 2009年10月19日

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