うずく、まる (新鋭短歌シリーズ)

著者 :
  • 書肆侃侃房 (2015年6月16日発売)
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感想 : 11
5



短歌が歌みたいだって 気づいたら

詩ってなんだろうって思った

エッセイって なんだろうって 思った

散文は 小説は どこからどこが線引きで
その境目は どこにあるんだろう て 分からなくなった

ただ心が見たものを
描いたら それをなんて呼べばいいのかわからなくて

とりあえず「詩」て 読んでみた

ポエムじゃない

やっぱり「詩」なんだって 思った

いつまでも浮かぶ月のように
どこかで揺れる花のように
いつか終わる夜のように

言葉にならない風景を 言葉にしたら

泣きたくなった

生きたい 死にたい
消えたい ここに居たい

今すぐ  ずっと

どこか 遠くに行きたいと 思った

空の向こうのような
言葉の 彼方のような

風に乗る 潮騒のような 香りがした


どこかで繋がっているのなら

一人にはならない

独りになんて なれない





触れられなかった光が 明るく 淡く 滲む
触れたかった月に手を伸ばして

触れても掴めないかもしれないと躊躇って
見ないように目を瞑ってうずく、まる

星の光は消えてくれないから 溶けない氷のように 胸の中で波を打つ

目を開いて 近づかなければ触れられないから

怖くても 握りしめて
全部知ることができないから
せめて握りしめて 満月のような欠片を胸に抱く

うずく、まるは温かいから
氷は温もりで溶けて 心の風景に重なる

知らない世界は知っている世界と交差して
月と太陽が出会うように それは星の瞬く夜のように眩いから

知っているはずの場所に 新しい色が混じる
まだ知らない場所は 掌で馴染んでいく宝石のように
冷たくても 体と同じ温もりになるから

大切な場所になる

これはまるで冒険のようだから
ここは音を探せば雨のように溢れている場所だから

宝物を探す旅の中で 春の音は夏の中でも輝く
銀色の煌めきは 花のように波打って 海のように散りばめて
風吹けば嵐のよう 一欠片の氷さえ星のよう
巻貝のような 掌の色彩が溶けて 胸の中は珊瑚のように色付いていく
陽光のように移ろいながら 道は虹のように続いていく

――果てしない空の中で

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年11月27日
読了日 : 2017年11月27日
本棚登録日 : 2017年11月27日

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