サラブレッドと暮らしています。 (ヤングアニマルコミックス)

著者 :
  • 白泉社 (2016年9月29日発売)
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感想 : 5

競馬といえばもちろん馬が主役だが、彼らが走る背景にはさまざまな仕事がある。
馬に乗る騎手(ジョッキー)、馬の訓練をする調教師、馬の故障・不調を診る獣医。
そして、馬の一番近くで馬と一番長い時を過ごしているのが、本書の著者もその1人である「厩務員」だ。
表紙絵の通り、厩舎が1階、厩務員が2階に住んでいるというのだから、「サラブレッドと暮らしています」というのは大げさではない。
日々、馬を洗い、給餌し、散歩をさせる。
厩舎にいる馬はそれぞれ個性的で、やたらと反抗的だったり、引きこもりのように厩舎から出てこなかったり、のんびり屋だったり、極端に怖がりだったり、始終欲情ばかりしていたりといろいろである。
働く人々も、馬の怪我がどうしたら悪化しないか、どうしたら気持ちよく走れるか考え続けている(そのくせ自分の肋骨が折れていても気にしない)アツい調教師、気持ちの浮き沈みが激しい新人ジョッキー、男社会に珍しく飛び込んできた女性厩務員とバラエティ豊か。
そんなわけで、お仕事実録ドラマとして楽しく読み進められる。

が、最後のエピソードでは競走馬の過酷な現実もにじませる。
馬は脚に大きな怪我をすると、致命的である。人ならば足を骨折しても通常は固定していずれ治るが、大きな骨折をした馬は、体重を支えることが出来ず、怪我をした脚が壊死し、悲惨な経過を辿る。そのため、一般的には骨折で「予後不良」と判断された場合、「安楽死」が下されることになっているという。
怪我をしたものばかりでなく、競走馬を引退した後に、乗馬や競技馬、種牡馬などの別の仕事に就けるものはそう多くないという。
著者もこのあたりに悩む描写もあるのだが、無理もない。とはいえ、著者は気持ちを奮い立たせてまた厩務員の仕事に励んでいくのだが。

厩務員というあまり馴染みがない職業を、ユーモアたっぷりに紹介して魅力的な作品ではある。が、読者としては、思っていた以上に過酷な馬たちの現実に何だか哀しくなってしまったというのが正直なところだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2017年1月9日
読了日 : 2017年1月9日
本棚登録日 : 2017年1月9日

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