日経サイエンス2017年9月号

  • 日本経済新聞出版社 (2017年7月25日発売)
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緊急リポートとして、北朝鮮の弾道ミサイル(ballistic missile:大陸間弾道ミサイル(ICBM)はintercontinental ballistic missileの略)の記事がある。次々とミサイル発射実験に成功したと発表している北朝鮮だが、開発しているのはどのようなミサイルで、どういった点が大きな脅威となるのかを解説する。
そもそも弾道ミサイルとは何かというと、前半部分でロケットを使用して大気圏外に飛ばし、後半部分で慣性にしたがって落下させるものである。飛翔経路が砲弾と同様に放物線を描くため、「弾道」ミサイルと称される。その特徴としては:
・遠距離を飛行可能であるため、攻撃されにくい場所から発射できること
・高い高度を通過するため、発射がわかっても迎撃が困難であること
・大気圏に再突入したのち、非常に速い速度(マッハ20を超える場合もある)に達すること(→やはり迎撃が困難であり、着弾予測地点で対処する時間もほとんどない)
が挙げられる。
こうしたミサイルを開発するためには、強い推進力を持つエンジンや正確な誘導装置、大気圏突入時の高熱によってミサイルが破壊されないための耐熱技術など、さまざまな技術的課題があるわけだが、ひとたびクリアされてしまうと、相手国には非常に大きな脅威となる。ミサイルを実際に発射した場合はもちろんだが、所有しているということ自体が威圧となる。
記事によると北朝鮮の技術支援にロシアが手を貸していると考えられるという。
弾道ミサイルは原理的に、宇宙ロケットに用いられる技術と重なる部分が多い。
弾頭部分に核兵器を積み込めば、核ミサイルとなってしまうことも怖ろしいところだ。
トランプ・米政権との間で緊張が高まってきているが、一大事にならないことを願いつつ、注視していきたい。

特集は「マルチバースと多世界」。
宇宙は1つ("Uni"verse)ではなく、たくさんある("Multi"verse)と考える宇宙論研究者が増えてきているという。インフレーション理論でいう急速膨張の時期に、性質の違う宇宙が沸騰するお湯の中の泡のように次々と生まれる。
空間が指数関数的に膨張し、新たな宇宙が次々生まれるとすると、起こりうる事象がすべて無限に起こることになり、理論から何かを予測できなくなってしまう。
この問題は、マルチバースを量子力学の「多世界解釈」と同様であると考えることで解決できるという。我々の宇宙は、単一の実空間ではなく、確立空間の中に存在する多数の宇宙の1つであることになる。量子力学では、1つの粒子がカップAとカップBのいずれにあるかは観測するまでわからない。それと同様に、観測を行うたびに2つの宇宙が生じ、一方の宇宙では粒子はカップAの下にあり、別の宇宙ではカップBの下にある。
・・・わかったようなわからないような、何となく雰囲気でわかったようなw話だが、いずれにしても、物理法則や素粒子自体が異なる宇宙が存在する可能性というのは想像するとなかなか楽しい。
宇宙論も量子力学も狐につままれたような感じがありつつ、「へぇー、また新しいことがわかったら教えてください」と思う分野ではある。

この8月には、北米を横断して皆既日食が観測できる機会があるが、これにあわせた記事もなかなかおもしろい。皆既日食は壮大な天体ショーであり、実際に経験してみると、数秒間で明るさが1万分の1に急減するという事象は、原始的な恐怖すら呼び起こしうるものだという。見るだけでも価値のあるものだが、もちろん、同時にこれはさまざまな観測のチャンスでもある。通常では観測しにくいコロナや太陽表面の様子を詳細に調べることが可能となるのだ。
実際のところ、日食自体は6ヶ月に1度は起きているのだそうだ(皆既日食はこれより稀)。地球上のどこでいつ日食が見られるか、詳細な地図が付いているのが楽しい。旅をいとわなければ、日食を見られるチャンスは案外多いようだ。

*8月12日記。ミサイル発射は回避されたんでしょうかね・・・?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2017年8月17日
読了日 : 2017年8月17日
本棚登録日 : 2017年8月17日

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