戦略の形成〈下〉―支配者、国家、戦争

  • 中央公論新社 (2007年11月10日発売)
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感想 : 3
5

[上下巻を通じてのレビュー]
主に欧米の古代から現代までの国家群における戦略の形成についての論集。個々の論文の質(や文章の巧拙、翻訳の良し悪し)にばらつきがある印象ではあるが、全体としては良書。日本の戦略形成について知りたくなるところではあるが、本書には含まれていない。森山優『日本はなぜ開戦に踏み切ったか: 「両論併記」と「非決定」』http://booklog.jp/item/1/4106037106 がこれに相当するように思うので、日本の事例が気になる方は一読をおすすめしたい。

本書はピーター・パレットの『現代戦略思想の系譜』や『新戦略の創始者』といった「理論(家)」中心の戦略の分析とは対比的に、戦略を「実践」の側面から分析しようという試みである。

要は、理論があったとしても、現実からの制約(「戦略環境」)によりそれは歪められてしまう。単純化を恐れず言えば、その歪みを見ようということだ。

あくまで戦争における「戦略」の形成について論じているものであり、ビジネスにおける「戦略」に資するだろうものがないとは言わないが、即援用可能かと言われれば、否と言わざるを得ない点に注意されたい。
本書の寄稿者たちの意を評者なりに汲み、あえて言うならば、軍事とビジネスの戦略を同じ「戦略」という言葉で片付けてしまえるほど、両者とも単純なものではないのだ。単純化して共通の「戦略」として落としこもうとすると、本書が避けようとする「理論」の罠に囚われてしまうのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 軍事/戦争史
感想投稿日 : 2013年10月5日
読了日 : 2013年10月3日
本棚登録日 : 2013年10月3日

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