立川談志にも、落語にもそれほど興味がないのだが、以前読んだ立川談春の『赤めだか』がとても面白かったので、手に取ってみた。
落語協会からの脱退、立川流創設のきっかけともなった著者が、談志の死を通して、談志の様々な顔を描いたエッセイもしくは私小説ともいえる一冊だ。
『赤めだか』の根底には師弟愛が深く流れていた訳だが、本書にももちろん師弟愛はある。それと同時に談志の「老い」というものにも視線を向けていることが印象に残る。
誰しも尊敬する師匠の「老い」からは目を背けたいものだろう。しかし、それをあえて取り上げたものは、著者が言うように師弟愛というよりは親子の愛情というべきものなのかもしれない。
本書には著者が書いた『赤めだか』の書評を読んで、談志が激昂したエピソードが収められているのだが、還暦間近の著者がなぜ怒られたのかも分からず、がくがく震えながら、慌てて談志に謝罪しにいくシーンには思わず、苦笑してしまった。
いくら歳を重ねようが、親は親なのである。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2013年3月9日
- 読了日 : 2013年3月9日
- 本棚登録日 : 2013年3月9日
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