読書日数 10日
とある漁港で暮らす、とある家族(?)の物語。西加奈子ワールドが、程なく涙を誘う。本当に読み終わって、心があったかくなる。
主人公は「キクりん」という、小学5年生。なんでも客観的に見る、悪く言えば「斜に構える」おませな女の子である。「肉子ちゃん」はこの子のお母さんらしいが、とても抜けていて、アッケラカンとした性格である。漢字を分解して叫ぶとか、いびきがとてつもなく下品だったりとか、勝手に名前を変えて読んだりとか、ほんとうに自由奔放である。そして何より「糞男」に何度も騙されていたとしても、それをなんとも感じず、ひたすら前向きに生きているそんな姿に、キクりんは腹立たしさを覚えたりしている。
漁港の日常が、テンポ良く描かれているのだが、そこでのキクりんの心情は、なんとも切ない。クラスの女子の派閥争いに巻き込まれたり、二宮という男子とのやり取りだったり、そして何より「うをがし」を通じての、漁港の住民とのやりとりを見ていると、キクりんの「望んで生まれてこなかったという劣等感」がにじみ出ている。
だが、クリスマスの日に盲腸になった時に、肉子ちゃんとの関係を語り合い、最後は「家族」というものがなんなのかを改めて思い知らされるのである。
この「肉子ちゃん」の「多大なる無償の愛」を受け続けていたんだと。こういった人は、そういない。そんな人が周りにいたら、自分はどう考えるのだろうか。
笑えるポイントもたくさんあって、本当にいいお話だった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年2月8日
- 読了日 : 2016年2月8日
- 本棚登録日 : 2016年2月8日
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