・多くの日本企業では、つくり手にも経営陣にも、「クリエイティブなセンス」がもっと必要。欠けているのは、ユーザーに徹底的に気持ち良さを提供しようというセンス。企業の美意識やセンスが企業価値になる、これが今の時代の特徴。組織として効率よく勤勉に働くのは変わらず大切だが、時代が誘う次のステージに向かうためには、それだけでは足りない。必要なのは、失敗を恐れず、縦割構造の会社組織に横串をさせる人。その人こそクリエイティブディレクターになれる。
・過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておくことが、新たに売れるものを生み出すには必要不可欠。まずは知識をつけよう。過去の蓄積、すなわち「あっと驚かないもの」を知っていればいるほど、クリエイティブの土壌は広がる。その上で、あっと驚くアウトプットを目指すべき。アウトプットの前段階においては、知識にもとづいた方向性の決定が大切。
・イノベーションは、ゼロベースで何かをつくることではない。知識と知識の掛け合わせ。1から2をつくる、AにBを掛け合わせてCにする、そういった意味合いの言葉。「あっ!」より「へぇ〜」に筆頭は潜んでいる。
ワープロや固定電話を使っていた人にとって携帯電話やパソコンは「へぇ〜」だが、江戸時代の人にとってスマホは「えっ?」という反応であり、結局のところほしがらなかったのではないか。仮に「この電話でいつでもどこでも遠くのひとと話せるよ」と説明しても「いや、狼煙があるからいらねえよ。だいたいいつも持ち歩いてなきゃいけねえなんていやだ」と拒絶されただろう。あっと驚く心の裏には恐怖も潜んでいる。新しいものに接した時、過去のものや過去の知識に照らし合わせて考えるのが自然だ。みんなが「へえー」と思うものは、ある程度知っているものの延長線上にありながら、画期的に異なっているもの、「ありそうでなかったもの」。ものをつくる人間は、新しさを追い求めながら、過去へのリスペクトも忘れないことが大切。センスとは知識に基づく予測である。
・センスの最大の敵は思い込みであり、主観性。思い込みと主観による情報をいくら集めても、センスはよくならない。思い込みを捨てて客観情報を集めることこそ、センスをよくする大切な方法。
・知識のクオリティが精度の高いアウトプットをつくる。たとえば福沢諭吉を3人の人が肯定的な評価をしたとしても、
A)福沢諭吉ってすごいよね
B)福沢諭吉って慶應義塾大学をつくった人で、すごいよね
c)福沢諭吉は日本を変えてやると中岡慎太郎たちが騒いでいた頃、次の時代には学問が必要になるだろうと考えて慶應義塾をつくったところがすごいよね
3人の意見は同じでも、信用度とクオリティは格段に違う。センスのある発言をするには、正確でハイクオリティな「精度の高い知識」が欠かせない。
・センスを磨く上で、好き嫌いでものを見るのは禁物。好き嫌いとは、客観情報と対局にあるもの。プロジェクト遂行にあたり自分たちの好き嫌いを外して、まずそのグラスを、「誰が、どんなときに、どんな場所で使うのか」を設定しよう。対象物を具体的に思い浮かべることは、センスを最適化するために、もっとも必要な三原則である。
・ものすごく狭い分野で豊富な知識を持っている人の中にもセンスがいい人は、すべての事象を自分たちの得意分野と結びつけることができる、特異なセンスの持ち主。センスを磨くには、センスを活用する技術を持つことも大切。
・人生の先輩たちが持っている知識、知恵、経験といったセンスのかたまりを、自分の中に吸収できるチャンス。人生の先輩と話してセンスの底上げをする。年が離れた人とよいコミュニケーションをとれるかどうかは、知的好奇心の強さで決まる。
,センスはすでに、あなたの中にある。"ガラパゴス"で生きている自分を自覚しよう。
- 感想投稿日 : 2017年2月12日
- 読了日 : 2017年2月12日
- 本棚登録日 : 2017年1月8日
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