後藤明生コレクション4 後期

著者 :
制作 : いとうせいこう  奥泉光  島田雅彦  渡部直己 
  • 国書刊行会 (2017年7月21日発売)
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感想 : 1
5

後藤明生の後期の小説を集めたもの。
私は圧倒的に『蜂アカデミーへの報告』が面白かった。
後藤明生自身が追分の山荘でスズメバチに刺された経験をベースに、スズメバチの博物学的世界が展開。
カフカ、メルヴィル、ファーブル、そしてゴーゴリ的笑いに満ちた引用の編み物。蜂被害にまつわる新聞記事からの引用もある。さまざまに錯綜する声がこだまする。

後期になって後藤明生の方法は先鋭化していく。講演をそのまま作品化したような小説や、プラトン的対話に似せたような作品、大阪に移住してからの俊徳丸をめぐる紀行文的作品……

どの作品も後藤明生その人に限りなく近い語り手なのだけれど、いとうせいこう氏が解説でも言うように、私小説っぽくもありながらその私の声を極力小さくしてみせる手腕は誰にも真似できない。良い意味ですっとぼけたものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・詩
感想投稿日 : 2024年1月2日
読了日 : 2024年1月2日
本棚登録日 : 2024年1月2日

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コメント 3件

workmaさんのコメント
2024/01/02

ouiさん
 後藤明生さんの存在を、昨年の高橋源一郎ラジオ『飛ぶ教室』テーマ『戦争』で紹介されて知りました。
 しかし、まだ手を出せずにいて読めてないのです。
コメントに書いてあった、「すっとぼけた」感じを味わってみたいものです(*^^*)

ouiさんのコメント
2024/01/02

workmaさん
ラジオで紹介されていたのは『挟み撃ち』あたりでしょうかね。私は初めて読んだのが後期の作品だったので、何だこれはと初めは仰天しました笑

短くて完成度の高い初期作品から試されてはいかがでしょうか。例えば「関係」。電子書籍も充実していますよ。老婆心ながら。

workmaさんのコメント
2024/01/02

ouiさん
後藤明生さんのおすすめを教えていただきありがとうございます(^^)
図書館で探してみます。

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