後藤明生の後期の小説を集めたもの。
私は圧倒的に『蜂アカデミーへの報告』が面白かった。
後藤明生自身が追分の山荘でスズメバチに刺された経験をベースに、スズメバチの博物学的世界が展開。
カフカ、メルヴィル、ファーブル、そしてゴーゴリ的笑いに満ちた引用の編み物。蜂被害にまつわる新聞記事からの引用もある。さまざまに錯綜する声がこだまする。
後期になって後藤明生の方法は先鋭化していく。講演をそのまま作品化したような小説や、プラトン的対話に似せたような作品、大阪に移住してからの俊徳丸をめぐる紀行文的作品……
どの作品も後藤明生その人に限りなく近い語り手なのだけれど、いとうせいこう氏が解説でも言うように、私小説っぽくもありながらその私の声を極力小さくしてみせる手腕は誰にも真似できない。良い意味ですっとぼけたものだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説・詩
- 感想投稿日 : 2024年1月2日
- 読了日 : 2024年1月2日
- 本棚登録日 : 2024年1月2日
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コメント 3件
workmaさんのコメント
2024/01/02
ouiさんのコメント
2024/01/02
workmaさんのコメント
2024/01/02