ビューティフル・ネーム (新潮文庫 さ 27-11)

著者 :
  • 新潮社 (2006年12月1日発売)
3.52
  • (13)
  • (24)
  • (42)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 193
感想 : 26
3

その名前が私を形作る。

未完の遺稿については、やはり完成したかたちで読みたかった。「眼鏡越しの空」については、自分が理解できない壁を感じる。理解したいと思っていても、なぜか壁が隔たるもの。チマチョゴリとキャミソールの話は、どうしても説得できない自分を感じた。アトナオにも奈蘭にも全面的に同意できないもやもやしたものを感じる。

「故郷の春」の主人公は、字面から陽気な、というか明るい口調が音で聞こえてくる。でもそれは、作った明るさのようにも感じられ、自分というか、自分と名前に所属する自分を受け容れるまで、アイデンティティーの確立までの葛藤をなんとなく感じてしまう。

チュー先輩のキャラクターは、とてもカッコイイ。もしかしたら、彼女も色々と考えたり恨んだりすることがあるかもしれないけれど、高校生の時点で、そうやってあっけらかんと、少なくとも外向きにそのように振る舞える時点で、とてつもなくカッコイイ。ところで、未完の「ぴょんきち/チュン子」の主人公もどうやらチュー先輩と同じ春純という名前だけど、同一人物だろうか。

容易に、~だった、良い話だったと言えない、自分で消化できない。自分の名前に対する誇りの話と一般化することもできない。消化不良のまま、当分抱えておきたい話であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 913: 小説. 物語
感想投稿日 : 2014年6月22日
読了日 : 2014年6月20日
本棚登録日 : 2014年6月22日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする