かなりや

著者 :
  • ポプラ社 (2008年11月1日発売)
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本棚登録 : 137
感想 : 33
5

この作家さんの本ってあったかい。

何のきっかけで知ったのかもう忘れてしまったのだけれど、めぐり合えたことを本当に幸運に思う。

生と死が交錯する裏の世界。抱えきれない荷物を解きたくて楽になろうと現実を捨ててしまおうとする人たち。そして、それを救う仕事を務める若い男の子。

実際は、こんなふうに九死に一生を得る幸運・強運な人はごく稀である。ほとんどの人たちは誰に助けられることもなく、また誰に助けを求めることもなく、命を絶ってゆくのだ。その目を背けたくなる現状は他人事でも何でもなく、わたしたちのすぐ側にある。けれど、少なくとも物語の中では、こうして救われる人たちがいて欲しい。そして、彼らには悩みながらも苦しみながらも自分の人生をまっとうできる道が続いていって欲しい。

“こんなふうにはうまくいかない”

それを呟いてしまう自分が嫌でも、やっぱり登場人物の幸せを願って涙ぐんで読んだ。彼らの人生の8割は嫌なことで、あとの2割にご褒美のように自分を助けてくれる人がこうして現れる。きっと、それは誰もにあてはまること。と願う。

各章のタイトルにもなっている科学事象は、浅学にして「シュレ猫」以外知らなかったから嬉しい驚き、発見だった。やっぱり面白い。また本を出してくださるとよいのだけれど。

東北が舞台のこのお話。そして、ご自身も宮城出身の著者。生死にまつわるお話を書かれる著者が、今このときに何を思われるのだろう。
(20110702)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年7月2日
読了日 : 2011年7月2日
本棚登録日 : 2011年3月22日

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