影の地帯 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (1972年8月29日発売)
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「Dの複合」に続き、再び松本清張作品の「影の地帯」を読んでみた。

新進カメラマンの田代利介が九州での取材旅行の帰途、飛行機の中で若い女性と同伴者の小太りな男と偶然出会う。この単なる偶然な出会いが思わぬ展開を見せていく。

田代の行き付けのバーのマダムが失踪してしまい他殺体として発見される。田代は情報を求め動き回るが、その立ち寄り先に若い女性と小太りな男が現れる。最初は単なる偶然だったものが、田代が核心に近づくにしたがい意図的なものへと変化していく。そして、バーのマダムの失踪と時期を同じくして、大物政治家も行方不明となる事件が発生する。この事件も時期が偶然だったものが、次第に関連性が見えてくる。
この二つの事件の背景にはなにやら政治の裏社会の姿が見え隠れし、その影で暗躍する謎の組織的集団が関わり田代の周囲の人間に手が及び、田代自身も生命の危機が迫り来る。

現代のサスペンス小説から比べるとスピード感や手に汗する派手などんでん返しはないものの、ゆっくりとではあるがじわじわと読む者に恐怖感を与えていく筆致はやはり、社会派サスペンスの巨匠松本清張ならではないだろうか。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2006年4月30日
本棚登録日 : 2006年4月30日

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