有栖川有栖による、作家アリスシリーズの短編集。
本作は珍しく収録作品全てに「〜殺人事件」と冠してあり、それぞれの物語が殺人を扱うことだけは確実に提示されている。そのバリエーションは様々で、その舞台となる建物もまた様々である。
表題作の「絶叫城」はホラーゲームの舞台であり、このゲームを模した殺人が展開されているように物語が進行していく。ホラーゲームも理不尽なストーリーだが、これを模した犯人も相当理不尽だ。さらに、現実でもよく展開される論理、「ホラーゲームをやるからこんな事件を起こすやつが出てくる」「規制を強くしろ」といった攻撃に対する作家アリスの思いを、本人が口にしたかろう言葉で反論するくだりもあり、興味深い。作者にその意図があったか、たまたまだったかは知る由もないが、表現・言論の自由についても考えさせられる佳作である。
他の作品も秀逸で、「月宮殿殺人事件」も、まさかこんなこととは、という展開を見せる。作者の知識の懐の深さを垣間見ることができる作品だ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2015年5月26日
- 読了日 : 2015年5月19日
- 本棚登録日 : 2015年5月26日
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