プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?

  • インターシフト (2008年10月2日発売)
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本読みには、堪らなく面白い一冊。読字は、脳のどの領域を賦活させるか。それは、中国語や日本語、アルファベットでも異なる。読字能力というのは後天的に習得されるもので、文字の生誕以降、人類の歴史は飛躍する。

後半、ディスレクシアに著述の大半を割いたのは、同障害を抱える息子への励ましか。少しくどい。サヴァン症候群が見せるように、一部脳の欠損があれば、脳の他の領域が、通常以上に働き、補う。ディスレクシアでは右脳域だが、優れた芸術家が多数存在する。脳の可塑性には、驚かされる。しかし、では、通常のバランスを保つ脳であっても、一部領域に過負荷をかける事で、天才を創る事が可能だろうか。加圧トレーニングのように。そんな所に興味の向きが逸れた。

ソクラテスの読字への警鐘についても、触れる。ソクラテスの杞憂は、彼の時代よりも、不安視するなら、ネット社会である、今でしょ。と著者は、言っている。ソクラテスの懸念は、一部、ショーペンハウエルの発言とも重なる。自らの思考を奪い、盲目的に書物に従うならば、確かに危険だ。至近の、論文コピペ問題にも通ずる。論文や教科書を盲目的に信じ切るのは、確かに危険だ。表現の自由が担保されず、未熟な倫理観の時代ならば尚のこと。

さて、読む事は、疑似体験を齎し、新たな回路を形成、あるいは、強化する。従い、真理に近づくためには、負荷を感じる位に、読みまくるべきなんだというのが、この本を読んだ結論だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年5月3日
読了日 : 2014年5月3日
本棚登録日 : 2014年5月3日

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