凪良さんはうまく世間と折り合いをつけられない疎外感や孤独感をこれでもかというほどに色あざやかに柔らかに切り取ってくるので胸が痛くてどうしようもなくなる。BLは人間関係の教科書だなぁとつくづく思わされます。
天涯孤独の身の上で窓辺から川を見下ろしてひっそりと暮らす仁居と、まっすぐな健やかさで仁居の孤独を包んでいく国立。両者に抱えきれない傷があり、他人に預けることを恐れてしまう思いがある。
二人ともがそれなりの経験を積んで、そこから出会いと別れを繰り返してこのタイミングで巡り会えたからこそ良かったんだろうなと思います。
いたずらに土足で踏み込まないけれど優しく寄り添いあう二人のやりとりがやわらかで優しく、ピアノのメロデイのように、綺麗な水のように心に染み渡っていく。
佐田との一件に関しても、佐田もまた深く傷ついて後悔を背負っていたこと、心から自分を優しく抱きとめてくれた国立を通して再会を果たし、過去の自分を許せたことで結末につながったあたりにとてもほっとしました。
お互い子供で、それ故に無茶を言って振り回してしまったのがすべて。傷の場所を確かめて、痛みと共に前を向いて歩けるようになったというのがすべてで、温もりに満ち溢れた結末だったと思います。
派手さはなくても、寄り添う優しさが心を温めてくれる心地よいお話でした。
国立妹もまた、時間をかけてもいいから前に進めるといいな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
BL
- 感想投稿日 : 2016年12月15日
- 読了日 : 2015年8月11日
- 本棚登録日 : 2015年8月12日
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