劇的な人生こそ真実: 私が逢った昭和の異才たち

著者 :
  • 新潮社 (2010年6月1日発売)
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感想 : 6

Weフォーラムのため、1週間ほど留守にすることもあって、その前しばらくは本の予約を控えていた。フォーラムがすんで帰ってきて、ぼんやりと図書館の新着リストを見ていたら、萩原朔美のこんな本が出ていた。誰も借りてなかったし、ちらっと目次を見ると増田通二さんが出てたので、おっと思って借りてきた。ニキ美術館をつくった増田静江さんの夫で、あの建物を設計した人である。

プロローグに、寺山さんのアフォリズムを真似てみたくなった、とこんな言葉が書いてある。

▼『面白い人が居ない時代は不幸だ。しかし、面白い人を求める時代はもっと不幸だ』 (p.5)
増田さんのほかに出てくるのは、真似てみたくなったという寺山修司、母の萩原葉子、森茉莉、土方巽、沼正三、東野芳明。「私が逢った」というとおり、私・萩原朔美が見た、そして関わりのあった「異才たち」の人生が書かれている。借りてきた日に読みはじめたら、ぐいぐい読んでしまった。

もう「異才たち」はみなあの世へ旅立った。萩原朔美だって60代なのだ。1946年生まれ、じじいになりつつある萩原朔美の、若い頃の話でもあって、同世代といってもどこにいたか、何をしていたか、どんな履歴かによって様々だろうけれど、(団塊とよばれる世代の先頭が若かった頃は、こんなんでもあったんかなア)と思った。

私は萩原葉子の暗い暗い、自伝的といわれる小説を高校生の頃に読んでしまったせいか、ずっと長いこと萩原葉子といえば陰惨な印象ばかり強かった。それがあるとき、親しい友だったという森茉莉の『ドッキリチャンネル』を読んでみたら、そこに出てくる萩原葉子は、むしろコミカルで、律儀で、ヤッタルデとがんばる人で、ほんまに同じ人なんかと思ったくらいだった。

息子の筆になる萩原葉子は、「年齢同一性障害」と書かれたりして、これがまたおかしい。萩原葉子が亡くなったあと、追悼展の際に「葉子像」をもってきたという、旧知の人らしいMさんという人がずっとイニシャルで登場するが、一カ所だけ、イニシャルにし忘れたのか、名前がそのまま入っていて、(ええんかいな、ここまでとここからイニシャルにした意味ないやんか)と心配してしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 図書館で借りた
感想投稿日 : 2010年8月2日
読了日 : 2010年7月31日
本棚登録日 : 2010年7月31日

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