香乱記〈中巻〉

著者 :
  • 毎日新聞出版 (2004年2月1日発売)
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 中巻に入って、というか、項羽が登場して(だと思う)、描写が丁寧になってきた。史書に現れない、人物の思考を辿っていくような描写。そこに筆者の人となりも反映されて、そこに厳しさと優しさとを感じるから、この人の作品が好きなのだと思う。上巻は、物語の基部を固めるのに一生懸命で、そこまで手が回らなかったのか? という好意的な見方もできるけれど、しかしプロの仕事なのだから、そういうことはできれば言いたくないなぁ。<br>
 物語の中心点がぶれ続けている、落ち着かなさがあります。田氏を当初中心に据えていたはずなのに、気がつけば史書に振り回されている。そんな感じがする。項羽と劉邦だったり、秦帝国の興亡だったり、古今いろいろなところで作品化されてきた、それらが筆者の頭の中でちらついて、振り回されているのではないか、と思う。読者も同じところに立てれば、そこに破綻はないのかもしれないが、同じところに立てない読者には、破綻しかない。小説とはそれでいいのか、という想いが沸々としている。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・その他
感想投稿日 : 2006年11月14日
本棚登録日 : 2006年11月14日

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