鎖国 下―日本の悲劇 (岩波文庫 青 144-4)

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  • 岩波書店
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感想 : 5

1982年刊行(初出1950年)。これでは序章が済んだだけだよ、と言いたくなる内容で、こちらが期待したもの、また著者の問題設定に十分な回答がなされたとは言い難い。けだし、近世江戸期の特徴、つまり鎖国によっていかな社会制度・経済制度とその現実が生み出され、近代への道程が滞ったことを解析して初めて回答になるが、これがすっぽり剥落。ただ、上同様、下巻も、戦国・織豊期におけるC教流入と迫害・排斥の模様が実にビビッドに叙述され、これも類例を見ず新奇。神田千里氏の議論(視点は真逆だが)の先駆と評しうるかも。
確かに、問題意識への回答は提示されないものの、叙述内容は「ため」になり、有益な読書体験。PS.①西欧におけるイスラムの如き、東アジア全体で対抗すべき勢力の不存在、②西欧内国家群が対抗・競争関係にあるが、東・東南アジアにはない、③金・銀等鉱物資源、木材等のE資源、香料・茶に匹敵する超高価な嗜好品が西洋になく、自足可能、④織豊→江戸期日本が、絶対王政と呼べるほど強力な中央集権でない一方、分国間対立が一応止揚されたに止まる連合国家で、日本が海外交易するのは徳川権力弱体化の危険(分国の潜在力強化)があった。
とはいえ、これらは日本の鎖国政策の理由付けにはなるだろうが、近代化の遅れとの関わりはまだまだ、自らの考察不足あり。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月23日
読了日 : 2017年1月23日
本棚登録日 : 2017年1月23日

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