2010年刊行。近年公開が進むアメリカの極秘資料に対日捕虜尋問の実態を記したものが存した。これを分析し、戦中の米国の広範な情報収集の実態、クロスリファレンスの実像、さらには、捕虜尋問所での隠蔽事件を戦後に追跡した日米元軍人の行動や旧厚生省の応待について叙述。判りやすい文章で一気読み可能。「貴公を敵に廻したくはないものだ。勝てるはずがないからな」とは、とある小説の一シーンだが、本書の印象がまさにそれ。こんなに「正確」かつ「多量」の情報収集に貪欲な相手に勝てるはずがない。日本政府の情報開示への消極姿勢も判る。
さらには、情報士官の教育・指導の日米差異、適材適所に関する日米の考え方の違いも、示唆的。あるいは、多様な想定(平たく言えば、戦陣訓が定められても不可抗力で捕虜になることは想定すべき。)がなされていないのは、正直理解に苦しむ。あるいは、大島駐独大使らが米国に護送?されている際、パンツ(褌)内に米ドルを隠し持ち、さらに持っていないと申告していた事実は、なんともはやである。
読書状況:読み終わった
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ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2017年1月17日
- 読了日 : 2017年1月17日
- 本棚登録日 : 2017年1月17日
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