自衛隊が危ない (小学館101新書 28)

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  • 小学館 (2009年4月1日発売)
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感想 : 8

2009年刊。◆身も蓋もない自衛隊の内幕暴露本。少数例だけで全体を論じる愚は避けたいが、①窃盗・横領事件がオープンにならない件は自衛隊の(警察官等も同様か)隠蔽体質を、②銃を撃たせられない隊員の処遇は、隊内の教育・リクルートを、③階級意識の欠如(経験豊富な下士官と未熟な士官が生むことあり)は旧軍との連続性と公務員のキャリア・ノンキャリとの関係性を、④新規隊員の自己主張など態度の変容は、民間企業の新人と同様の問題を照射したものだろう。現代・公務員・旧軍との関係等、自衛隊の属性から導出される要素なのだ。
◇著者対田母神氏論争における、公僕の姿勢に関し、公務員の身分保障を盾にとる田母神氏は、悪い意味での公務員チックな発想・反論であり、逆説的な意味で、なかなか面白い。◇また、自己防衛のために、自ら大きな価値を置いていない現行憲法の表現の自由を持ち出す田母神氏の右顧左眄には苦笑せざるを得ない。そもそも非現業・権力的作用を有する公務員は、国民の多様な政治的意見の存在が想定される中、政治的中立性が要求される。つまり、彼のような立場の官僚においては特定の見解に依拠する表明・表現には縛り・制限があるのだ。
公務員なら当然認識しているべき精神に欠けた田母神氏の有り様に関し、批判的目線を持つ著者の方に親近感を覚えるのは否定できない。◆確かに、叙述が体系的・網羅的ではなく、あくまで著者の切り取った断面であることは忘れてはならないだろうが、自衛隊のある種の実態を明らかにした本として、また、簡明に読める本として一読するのはいいかもしれない。PS.自衛隊の制服組幹部の発言・発想には注意を要するかも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月24日
読了日 : 2017年1月24日
本棚登録日 : 2017年1月24日

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