チャグム皇太子編最終章の最終第4弾。
戦いを厭いつつ、その必要性とかような選択の愚昧さとに心揺らされるチャグム。彼が、戦いを忌避し続けた父の限界を超克するために必要だったのは、辛い経験と経験に裏打ちされる心の強さ、そして父の誤謬を正し得る理念だったのか。
最終幕、一度は平穏を回復した新ヨゴ皇国だが、自国の復興と周囲の強国とに挟まれた状況は予断を許さないだろう。
そんな中、民を想い、幼い妹弟を想い、近隣に強国控えるチャグムの歩む道は孤独かつ茨のそれである。そこで為政者となったチャグムが気付くのは父先帝の孤独なのではないか。
父帝もまた、心を開き相談できたのは先代聖道師に対してだけ。それ以外の人々に心を打ち明けられなかった姿が垣間見える。そんな中、政治の決定行為をたったひとりでに担ってきた先帝の偉大さではなかろうか。
まぁ、チャグムも、ヒルデガルド・マリーンドルフの如き、聡明な妃を得られれば変わるかもしれないが…。
さて、物語としてのバルサは、「闇の守り人」で終焉しており、本作全体を大きく動かして来たのは、やはりチャグムである。
未完成ながら、状況に真摯に向き合う彼の姿は心を打つものがあった。
続きが見たいな、と思わせる小説はやはり素晴らしい。楽しい読書空間を齎してくれた著者に感謝を…。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2016年12月10日
- 読了日 : 2016年12月10日
- 本棚登録日 : 2016年12月10日
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