モノレールねこ

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年11月29日発売)
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短編集でした。

モノレールねこ…でぶねこを介して、隣の小学校のタカキとやりとりするも、モノレールねこが車に轢かれて遊ぶことが叶わず。就職した先で再会

パズルの中の犬…夫の帰りを待つあいだの暇つぶしに、三百円の真っ白のパズルを買った。そのパズルがなんだかおかしい…。
待つことが嫌いな私。その背景には、小さい頃母親がパチンコに行ってる間寂しく待っている記憶があった。母は自分を責め、私は母を責めた。母の苦労を知った。パズルの犬は、戌の日にちなんだもの。

マイ・フーリッシュ・アンクル…私を置いて、海外旅行に行った家族が全員死んだ。残されたのは、お父さんの年の離れた弟である叔父。叔父は三十代になっても職に就いてないニート。それでも可愛い姪っ子のために、母の代わりとなり頑張った。兄貴みたいに俺は強くない。と言って。
十年後、私は結婚した。
たった一人の家族として、叔父は「いってらっしゃい」と。

シンデレラのお城…居酒屋で知り合ったミノさん。私はミノさんが好きだった。そんな思いを伝えれるほどの度胸はなかった。
結婚の話をタラタラする流れで、偽装結婚をした。
ミノさんには、婚約者がいた。でも、ずいぶん前に亡くなっていた。
ミノさんにはその婚約者が見えた。
だからミノさんは結婚する気はないが、周りが身を固めろとうるさいから、偽造結婚をした。
小さい頃、私は貴樹くんと遊びたくて、熱がある貴樹くんを連れ出して、雨の中遊んだ。その後、貴樹くんは死んだ。
ミノさんの婚約者は、子供を生んだ。貴樹とつけた。
その後、ミノさんは事故で死んでしまった。
五人で暮らしていた家に、私は一人ぼっちになった。
義母さんと暮らすことで、ミノさんのように、ひとりぼっちにはならない選択をした。

セイムタイム・ネクストイヤー…娘を亡くした私。自殺を図ろうとしたホテルで、娘の後ろ姿を見た。このホテルは幽霊に出会えるホテル。年に一度だけ。
でもそれは、幻想だった。
自殺を図ろうとした私を、ホテルマンが阻止したのだ。
娘に似た後ろ姿は、保育園から帰ってきた従業員の子供。しかも男の子。時が経つにつれ、男の子らしくなり、声変わりが始まって会話をすることができなくなった。
私は気づいていた。年に一度、亡くなった成長する娘に会えるはずがないことは。
余命半年を告げられ、来年の予約はしないと言ったが、ホテルマンは待っていると言った。

ちょうちょう…ラーメン屋さんのおはなし。出店当初はクチコミミーハーで繁盛するが、そのあとは急降下。タベログにあることないこと書かれ、自分で判断しない人たちがほとんどの世の中、口コミが全て。それでも常連やリピーターで徐々に景気を回復。
従業員のランは、店長である俺に言った「開店祝いにもらった花も枯れないうちに逃げ出すようなやつは止めもしない」と。
一ヶ月たっても一鉢だけは一向に枯れない。
「バレちゃいましたか。造花です。永遠に枯れませんよ」

ポトスの樹…クソ親父の話。
小さい頃からロクでもなかった。
俺の貯金していたお金をタバコに使ったり、釣りに行った先で溺れそうになってる俺を助けるどころか、自力で這い上がった俺に「竿はどうした」の一言。
結婚するにあったって、元彼女は「お父さんにやっと会えるのね」と意気揚々。
俺のオヤジのクソさを知らないからだ。
ついに孫が生まれて、両家でショッピングへ行った。
そこで妻子に逃げられた男が暴れていた。
標的にされた俺の子。
その時、子供のために死ぬなんてバカバカしいと言っていたクソオヤジが、俺の子供を守った。
オヤジがいうには「孫はいんだよ」だそうだ。
その一件から、クソオヤジは有名になり、カメラの仕事がちょこちょこ入った。
孫にいろいろ買ってあげたいそうだ。

バルタン最後の日…ザリガニの話。
いじめを受けてそうな息子。でも何も言わない。夫も話を聞いてくれない。どうしようか。
そんな時、息子がザリガニをとってきた。
そのザリガニが脱皮をした。
それを見て私は決意した。
私も脱皮しよう!
テレビでやっていた「笑うことが大事」に則って、私はダジャレを言いまくった。
それに答えるように、夫も「ディズニーランドに行こう」と提案。
そんな旅行中、泥棒が侵入。
俺はザリガニ。泥棒なんて追い払えないが、ここで過ごした日々は宝物だ。
帰ってきて何もなくなってたんじゃあ、家族が報われない。
ハサミで追い払ったが、水のある水槽までは戻れそうもない。
でも俺は本望さ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 単行本
感想投稿日 : 2016年7月29日
読了日 : 2016年7月28日
本棚登録日 : 2016年2月20日

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