様々な「依存」について書かれているけれど、特に印象的だったのは「親と子」に関わる部分。
この人のご専門は、基本的に母と娘との関係における親子論だと思うのだけれど、この関係はおそらく家族介護でも最も厄介なものなのよね。
私の母はさほど「介護」を必要とする間もない状況で逝ってしまったので、私自身はそういう「娘介護」の葛藤には無縁だった。ところが周辺を見るとまあ母娘介護の「うわああああ」事例の多いこと多いこと。
東京で『ケアラーズカフェ・アラジン』を主催する牧野さんにお話をうかがった時「介護者の中でも特に娘さんの気持ちというのはとても煮詰まっているの。このカフェでも定期的に『娘の会』というのを催しているけれど、そこでは皆さんほんとうにぎりぎりの状態だということがわかるわよ。」と言っておられたのがとても印象に残っている。
この本の中にも『親を一番見ているのは子ども。だって子どもは『生かしてもらっている』ということを言われなくともわかっており、親の自分に対する感情をどうコントロールすればいいかを必死で考えているのだから』といったような描写がある。
言い換えれば、子どもを『生んだ』ということで『育てなければ』ということを義務感のように思っている親の下では、同時に子どもも『生かしてもらわなければ』という責務を感じてしまうのだ、ということ。
親が常に自分に対しても子に対しても『〜なければ』を課している状況、それはつまり親は子に対して『貸し』を作っているということ。『あなたのために「してあげて」』いるということは、子にとって『借り』を作らせているということ。
旧弊な社会ではそう思うことが当然であり、その『貸し』のことを『親の恩』、その債務を返済することを『親孝行』と言った。
でもそれは、是非論はおいといて、現代社会では馴染まない。個人は生まれるべき権利があってそこに存在するのであり、親の都合云々は二の次、と私たちは学んでいるのだから。
著者の言うには、子どもを育てることについて「無理をしないで楽しむこと」がいいのだと。育てる過程において、なんらの貸借状況を作らないこと。
至極、もっとも。
- 感想投稿日 : 2014年4月19日
- 読了日 : 2014年4月18日
- 本棚登録日 : 2014年4月19日
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