朝鮮王朝最後の皇女 徳恵翁主

  • かんよう出版 (2013年4月21日発売)
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感想 : 4
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王族というのは、その民族の伝統文化を継承し、民族の象徴となり、そして民衆に愛される存在。支配する側に回った日本が、その王族ーー朝鮮王族の血を途絶えさせようとした事実を知り、それだけでも重い小説だった。王の葬儀まで日本式に執り行うほど日本がどれほどかの愚行をしtきたことか。
 日本に対してもっと厳しい表現が出てくるかと思っていたが、押さられたトーンだった。韓国で70万部突破したと帯にあり、読んでいくうちになるほど呉善花さんの著書で知った韓国人の”恨”という感情がこの小説に流れ琴線に触れたのだろう。
 私はこの小説の脇役でしかない宮女の福順の逞しさが好きだ。
”恨”に打ちひしがれたいるだけでなく、それをも明日への力にしている。最後の皇女といわれた徳恵姫は篭の鳥育ちで、余りに繊細で大人になれず、結婚して母となってもこの印象は変わらなかった。むしろ日本人との夫との間に生まれ、後に自害してしまった娘こそ、悲劇であったと思う。民族差別の圧力からくる悲劇の連鎖を停められなかった徳恵姫の弱さを思う。
 原作に忠実に訳そうとの配慮からか、表現が不自然で小説として読んでいて臨場感に欠けるのが惜しかったです。さらに注釈があればもっと小説の舞台となっている場所、時代背景も読み取りやすかったはずです。
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2013年5月25日
読了日 : 2013年5月23日
本棚登録日 : 2013年5月18日

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