白蝶花

著者 :
  • 新潮社 (2008年2月1日発売)
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本棚登録 : 528
感想 : 93
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戦後70年の節目を迎えた今年の夏は、例年以上にメディアでも戦争が取り上げられていました。
そのうちいくつかは自分でも読んだり見たりしたけれど、
あまりの悲惨さに目をそらしてしまったものも多くて、、それではいけないと思い直しての本選定。

社会的にも女性は地位が低く、
また、戦争の影響で自由も許されなかった時代に
愛する人を信じて強くしなやかに生きた女性5人の物語です。

 女中である千恵子は、書生の政吉と恋に落ちる。
 間もなく政吉は出征し、
 千恵子は身ごもっていることに気が付く。
 千恵子は実家に帰ったものの、
 「未婚の女が、明日死ぬかもわからない男の子供を産むなど許さない」と父親に勘当され…。(乙女椿)

一個人の人生の転換期の背景として戦争があり、
その理不尽さを身につまされる思いで読みました。
自分は自由が許される今の時代に生まれ
本当に恵まれている。

一番愛した人と一緒におれないなら、死んでしまった方がましだとたぶん自分は思うけれども、
ここに出てくる5人はそうはしなくて、
どうにかして愛した人の子供を産み育てよう、
愛した人の分まで生きようとする。
とても強い。

乙女椿の政吉の手紙を読んで嗚咽してしまった。
戦争の理不尽さと人間の美しさがより悲壮感を産むのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年9月5日
読了日 : 2015年8月25日
本棚登録日 : 2015年9月5日

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