この本は司馬遼太郎の対談集である。
「坂の上の雲」で多少ゲンナリしていたので、不安があったが読み終えたら結構おもしろかった、というのが率直な感想。
ただ、この対談は昭和45年~46年くらいのもので、わたしが2、3歳の時期である。もちろんわたし自身、この頃の時代がどういうものだったのか、存在はしていたが、時代の雰囲気までは感じ取れない年齢で、だから新鮮味があった。
司馬遼太郎を初め、ほとんどが既に鬼籍に入ってしまった人たちで「この人ら、このときはこのように言ってたけど、今の時代を過ごしていたらどんな感じだったろうな?」という気持ちがすごくする。ここ数十年間で日本は随分変わった、日本人も変わったんじゃないかと思うくらい、この本に出てくる「日本人」は違うと思う。ただ、時折「集団ヒステリー」を起こす、と書いてはあったが、まさか四六時中集団ヒステリーを起こす民族になってしまったとは想像できまい。
あとは文明が進むとそれぞれの人が「小粒」になるのかなあという気がしないでもない。あの時代からわたしが大人になるくらいまではまだ大物がいたような気はするが、今の時代はそういう人物もあまり見当たらないものなあ。。ただ、それは「階級のない社会」であった証拠であるから、仕方のないところなのかも知れない。昔のような超エリート数人で国を動かしてもいいものかと思うと、やはりそうは思わないので。
この対談の中で出て来た辻悟という精神科医の言葉が頭に残る。ただ、ネットでいろいろ調べてみたらこの言い分は「持論」らしい。
「だから自分の属している集団の同質性であれ、歴史の中から自分のものとした安定性であれ、自分のよりどころとしているものに絶対的なものとして寄りかかってしまうのではなくて、相対的なものとして受け止める心を自分のものとしなければなりませんね。それは不安の多いものではありますけれども、そうでなければ人間の精神は閉ざされたものになってしまう。簡単に実現できるという保証もありませんし、終わりのない作業かもしりませんが、それが大事であるという心構えだけは最低限持ってなければならない。」
それから、最後の今西錦司との対談が面白かった。
- 感想投稿日 : 2014年2月14日
- 読了日 : 2010年2月1日
- 本棚登録日 : 2014年2月14日
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