スマートフォンを切り口に、2011年時点での「個人情報=プライバシー」の現実を赤裸々に描いた本。
ややソーシャルメディアの話が多く、一読するとタイトルにそぐわない印象を受けるかもしれないが、スマートフォンに起因する具体的なインシデントが多く出ているわけではない現状にありながら、近日中に確実に現実になるであろう危機に対して先駆的に警鐘を鳴らしているという意味で、著者の先見の明というか勇気を感じた。
文章についても「ネットの悪意」を目の当たりにしているセキュリティ専門家らしく、慎重でありながら真意をきちんと伝えようとするバランス感覚の良さを感じる。また、専門家こそ自ら毒見をすべしという主張も説得力を感じた。
この本を読んで殊更感じたのが、「大衆による検閲」という日本の現実。良く中国での国家による検閲行為があげつらわれる事を目にするが、実は日本にも検閲は存在しているのだなと思った。
これって単一民族という幻想を持ち、右に習う事が美徳とされている?日本特有の、とっても珍しい現象なのかもしれない。そういう意味では他の国ではどうなのか、2ちゃんや炎上に相当する現象はあるのか、という点が非常に気になった。
いずれにしてもこの本はあくまで序章であり、きっかけである。来年、再来年と大きく話題になることは間違いないプライバシー問題の核に斬り込む挑戦的な本であるという意味で高く評価したい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
IT
- 感想投稿日 : 2011年9月9日
- 読了日 : 2011年9月8日
- 本棚登録日 : 2011年9月1日
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