『世界の子どもたちに教育を』『貧しい人々に食料を』というと深刻な問題と感じますが、『すべての人々にトイレを』というとコミカルな響きがあります。
しかし、本書によると、世界の人口の半数近くが公衆衛生の整わない環境(森や茂みのなか!)で排泄せざるをえないそうです。そして、糞便が食事や飲料水に混入し、コレラや下痢を蔓延させ、多くの人々が命を落としている…。となると、トイレ問題は決して冗談ではない、世界が抱える深刻な問題の一つに違いありません。
ふだん、あまりに日常的になりすぎて意識にすらのぼらないトイレをテーマにしたルポルタージュ。
本書では、日本のウォシュレットにはじまり、カーストゆえに糞便処理を生業とするインドの不可触民、中国の排泄物のリサイクル(バイオガス)など、世界各国のトイレ事情が紹介されています。
ウォシュレットに神道の禊ぎが影響しているかはともかく(笑)、トイレを切り口に文化を考察するのは新しくて刺激的。中国には扉がついてない公衆トイレがあり、排泄しながらおしゃべりしているそう。西洋においてもトイレでのプライバシーは意外なほど新しいようです。
本書を読み終わって気になるのはやはり日本のトイレ事情。下水処理で働いている人も当然いるわけで、あらためて感謝の念を新たにしました。あまり話を聞かないのは、やはり"臭いものには蓋"でしょうか?
著者にならって、日本も排泄をタブー視するのはやめてもいい頃合いだと思います。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年10月29日
- 読了日 : 2014年10月29日
- 本棚登録日 : 2014年10月29日
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