なめらかな社会とその敵

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著者 : 鈴木健
ryhさん 社会科学   読み終わった 

認知能力や対策能力が脳や技術の進化によって上がるにしたがって、単純化の必要性は薄れ、少しずつ世界を複雑なまま扱うことができるようになってくる。人類の文明の歴史とは、いわばそうした複雑化の歴史である。p7

外部からの摂動によって細胞は常に壊れ続け、そして同時に修復され続けている。死につつ生きることによって生命は維持されている。p15

Facebookの2012年における月間アクティブユーザ数は約10億人。p36

【SNSの革新性】p36
SNSは、世界全体のソーシャルグラフをデータベース上に再現しようとしている。その中で情報は、組織や国の境界を意識することなくなめらかに伝播していく。このなめらかなメッセージングの仕組みは、既存のマスメディアの情報発信と大きく異なっている。マスメディアは、情報が伝達される対象が国や言語、デバイスなどに応じた特定の視聴者に限定されている(膜の性質)。ごく少数の発信者と多数の受け手とに分かれる非対称性もあり、発信者側にまわれるのはごく一部の人だけである(核の性質)。
これがソーシャルグラフ上のなめらかなメッセージングでは、誰もが情報発信できても誰もが受信者になることができる。どの情報が直接の知人だけで留まりどの情報が世界中に波及するかは、実際に発信されてみるまでわからない。
SNS以降の時代において、情報は基本的に管理できない。

フラットな社会は一見理想的なようで、生命のもつ多様性を否定している。一方で、なめらかな状態は、非対称性を維持しつつも、内と外を明確に区別することを拒否する。ある状態から別の状態までは連続的につながっており、その間のグレーな状態が広く存在する。p41

ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ、貨幣の本質とは「欲望の二重の一致」の困難を解決するもの。p50

貨幣には2つの成立要件がある。第一は、欲望の二重の一致の困難を解決することである。第二は自己言及的に価値が維持されるという性質である。この第二の性質により、貨幣は価値の流れ(フロー)としては認識されず、かわりに価値の貯蔵(ストック)として認識されるようになる。p52

「伝播投資貨幣システム(PICSY:Propagational Investment Currency System)」
<特徴>
・フローベース
・代替通貨
・投資性(レントが存在しない)
→貨幣レベルで組織が仮想化された貨幣
⇒「なめらかな社会」を実現する
Cf. PageRank

自分という存在が世界の中で同心円上に広がっているという感覚こそ、近代社会を超える新しい世界観なのではないだろうか。p123

カール・シュミット、政治とは「敵と見方を区別すること」である。p133

【近代民主制を硬直化させる3つの壁】p135
近代民主制はこれまで、国家の壁、組織の壁、個人壁という3つの壁を持っていた。
①国家の壁:近代国家が投票者(国民)のメンバーシップを厳密化する。たとえば、アメリカの大統領選挙は、世界のすべての人に大きな影響を与える選挙であるが、それに投票できるのはわずか3億人にすぎない。
②組織の壁:利益団体や政党によって、投票の多くが死票となり、権力闘争が生じる。世論と異なる政策が実現しても、制度的硬直性に対して私たちが対処する手段はほとんどない。
③個人の壁:個人という幻想が、過度の合理化や言い訳を増幅させる。矛盾を許容しない社会は、多様性を許容できなくなる。いわば、分人の死票が発生している。

【「伝播委任投票システム」(Propagational Proxy Voting System】p137
Cf. 「一票の格差」是正
メタシステム的側面 p166

【メンバーシップとステークホルダー】p168
グローバル化と先進国における価値観の多様化は、固定的なメンバーシップによって社会を統治することを困難にしている。すなわち、国内であるからといって必ずしも同じ価値観を共有しているとは限らず、むしろ国境を越えた連帯のほうが強くなりつつある。
情報化社会の発達は、こうした傾向に拍車をかけ、人々はますます多重帰属的になりつつある。地理的な制約で統治を行うことの限界は、次第に明らかになりつつある。

個人民主主義においては、個人の一貫性と組織や国家への同一化こそが、中心となる規範と倫理であった。分人民主主義が大事にする規範と倫理は、身体から生じる自然な声や情動を重視し、個人の中、組織の中、国家の中の矛盾を理解し許容する文化である。
一貫性という強迫観念から解き放たれた社会システムを、民主主義という社会のコアシステムから支え上げるのが分人民主主義の構想である。これは単なる民主主義の変革に留まらず、新しい社会規範を生みだすことだろう。静的で一貫し矛盾のないことを是とする世界観から、動的で変容し多様性にあふれることを是とする世界観へ、私たちの身体が今こそ試されている。p175

【自然知性】 p179~
万能機械主義の時代 1936年~
身体環境主義の時代 1968年~
ネットワーク主義の時代 1995年~

アラン・ケイの「メタメディア概念」
パーソナル・コンピュータとは「個人が動的にメディアを作るメディア」 p182

ヒューマン・コンピューティングの勃興
Cf. 中国語の部屋 p191

マクルーハンのアフォリズムによるメディア表現「メディアはマッサージである」→身体環境メディア p199

「ゲームの労働化と労働のゲーム化」p201

【構成的社会契約論】p211~

イルカの研究で有名なジョン・リリーは「クジラやイルカに国連の議席を与えるべき」だと主張した。p242

【生態系としての社会へ:オートポイエーシスからハイパーサイクルへの退化】p241
主体性が膜の境界を溶け出ることは、社会を、個体のメタファーというよりは生態系のメタファーに近い存在にする。生命における代謝系に相当するのはリソースの分配を司る「伝播投資貨幣」によって、中枢神経系は意思決定を司る「伝播委任投票」によって、そして末端神経=筋肉系は実行を司る「構成的社会契約」によって、社会はその膜性を弱くした生態系へと変化する。経済においては競争相手、政策においては論争相手、政治においては戦争相手という、弱い意味から強い意味にいたるまで「敵」の概念がなめらかになる。これはいわば、オートポエーシスからハイパーサイクルへの退化といっていいかもしれない。

<memo>
人類の叡智が学際的に集積されていくプロセスをダイナミックに描いてみせた。理系・文系という狭隘なマインドを超越した知性と情熱は、学問を未来を切り拓くための武器へと昇華させた。
アラン・ケイ「未来をつくる最大の、

レビュー投稿日
2013年3月21日
読了日
2013年3月27日
本棚登録日
2013年1月28日
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