<三島由紀夫 文化の旗手>
「彼は時代の迎合と時代の拒否、敗戦から高度成長にいたる社会の転変の中で、足元に鬩(せめ)ぎたつ二つの巌に途惑いつつ、ついに自己欺瞞の地隙(ちげき)に堕ちたのだと、私は思った。...「天人五衰」を絶筆として、彼は“寂寞(じゃくまく)の庭”に立った。」
「ひとは情熱がなければ生きていけない」
副題<勇気凛々ルリの色> 浅田次郎
浅田次郎は作家を目指す、駒場東邦の高校生だった。ある日水道橋の半地下にあるスポーツジムでバーベルを持つ三島由紀夫と目を交わす。そして三島の自決。浅田は大学に入るの止めて、自衛隊に入って市谷駐屯地の陸士長にまでなる。そして作家を目指して自衛隊を退役するが、初めて単行本を出したのは、38歳であったらしい。
戦後の日本が生んだ「異形の才能」三島由紀夫を考えることは、日本の戦後を考えることになるのかもしれない。本人は、自分を「タランtalent多才」ではなく、「ジェニgenie天才」だと考えていたらしいが。
「人の心は、宇宙と同じ無限の時空を持っている。そしてあらゆる芸術表現は、人の心と、人をめぐる天然の人為的再生にちがいない。」
「本だけは、読んでください。なぜかというと、本を読んでいないと、人間はどんどん馬鹿になる。...活字を読むかぎり、人間は常にモノを考えなければならない。」
ラスベガスのカジノを梯子して、二万ドルを摩ってしまう、破天荒な生き方と、その裏腹の地道な小説家としての努力が、そしてまたこの作家の熱い心が、この本からは滲み出ている。
- 感想投稿日 : 2007年8月15日
- 本棚登録日 : 2007年8月15日
みんなの感想をみる