濃密、という言葉がぴったりの作品だと思います。
460ページなので長編としては標準的なページ数だと思いますが、読み終えるのにそれなりに日にちを要しました。
面白くなかったとかいうわけでは全然なくて、どんどん読み進めるタイプの作品ではなかったからです。
とにかく主人公を含め、カジマナに翻弄される人たちの心情の揺らぎがリアルで、かつ重い。
本書は個人と世間体といわれるものとの距離感の取り方もテーマの一つになっていますが、自身の常識、価値観と照らし合わせて読むとより心に響くと思います。
柚木さんって読者の気持ちをぐらつかせるのがうまいですね。
個人的には物語中盤、主人公の友人の女性が単身である行動を起こすところが読んでいて一番スリリングで面白かったです。
ただ、それ以降はやや平板というか、心情の変化という意味では予想を超えるものではなかったかな。
物語の展開自体はカジマナの復讐があったりしてそれなりに起伏に富んではいるものの、できればもうひと驚きさせて欲しかったと思いました。
それでもこのテーマを描ききった柚木さんの勇気に敬意を表して、星5つとさせていただきました。
それと、本書は装丁も素晴らしいですね。表紙の紙質もこれしかない!っていう手触りでGOODです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
柚木麻子
- 感想投稿日 : 2017年7月15日
- 読了日 : 2017年7月15日
- 本棚登録日 : 2017年7月15日
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