歌人、河野裕子氏の遺作集。がんに冒され、既に自分の死期を知りながら生きていくという肉体的にも精神的にも厳しい辛い状態の中、最期まで歌を詠み続けた人。今まで、いろいろな形で死期迫った人々の物語、小説、ドキュメントなどに触れてきたが、これほどリアルで辛く心に沁み入ってきた作品は初めてだ。短い三十一文字に込められた生、家族、自分の状態等心に響く。歌の力というものは大きいのかと驚かされる。私と10ほどしか年齢も違わず、発病したのは6年ほど前、人の命の儚さと強さを同時に感じる。体は自分の思い通りに動かせず、呼吸さえ自分でままならなくなっても、意識だけははっきりしている。これほどつらいことはあろうか。妻として母として家族に対する愛情を溢れさせながら、家族を残していく辛さ。また家族全員がとても優しいということも感じられる歌集だ。
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- 感想投稿日 : 2011年9月10日
- 読了日 : 2011年9月10日
- 本棚登録日 : 2011年9月10日
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