ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社 (2006年12月7日発売)
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感想 : 117
5

何も知らないということは、
人間が失ってしまった
全てのものを持っている
ということだ。
これには本当に納得した。
何も知らない、無垢な状態とは
知恵の実を食べてしまう前の
楽園のイブだ。
ヘビであるヘンリー卿がそそのかし、
ドリアンは罪を知ってしまった。
この時点でドリアンは
神から見放され、
人生を追放されたのだと思う。
また、バジルの描いた絵も、
美しくありながら、
怪しいヘビであったのではないかと
感じた。
ドリアンの美しさを崇拝しながら
一方では、彼の美しさを
自覚させてしまうエゴに悩む。
だからバジルはあんなに苦しみ
絵に罪を感じていたのではないか。
けれど罪というものは美しく
魅力的だ。
絵が老いていき、
代わりにドリアン自体が美しき
罪になった。
秘密、支配、誘惑、抵抗
このワードに印をつけた。

結末で、全ての罪が戻り
死んだことで、
ドリアンはどんな感覚を得たのか。
それにより魂は浄化されたのか?

また、この時代は、同性愛について
描くのが難しかったということで
もしオスカーが現代に生きていたら
描写はまた変わるのか気になった。

美しきドリアンを崇拝する
Mなバジル。
美しきドリアンを
支配することで快楽を覚える
Sなヘンリー。

人は、持っているものが
貴重であるほど、
エゴイストになる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年5月28日
読了日 : 2013年5月28日
本棚登録日 : 2013年5月24日

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