これは王国のかぎ (中公文庫 お 65-9)

著者 :
  • 中央公論新社 (2007年2月1日発売)
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本棚登録 : 1672
感想 : 203
5

 中学生のときか高校生のときか忘れましたが、学校の図書室で出会って以来、思い出深い一冊です。当時読んだときはハードカバーでした。
 当時読んだ本のことや内容は大抵忘れてしまっているのですが、この本についてはかなり覚えています。

 アラビアンナイトのような世界へ突然放り込まれて、王子様たちの波乱万丈な人生の一端に関わることになってしまった中学生の女の子。
 知らない世界でも物怖じしないさばけた性格の主人公が荻原さんらしくて好きです。ハールーンも。

 シェエラザードの存在や言葉が謎めいていて不思議な終わり方なのですが、入れ子人形のように、物語の外側にさらに物語が広がっていて……という考えはとても共感できます。むしろ、そういう価値観をこの本から貰ったのかもしれない。
 わたしたちの知覚する世界は宇宙の遥か彼方まで広がっているけれど、もしかしたら宇宙の向こうにあるのは、女の子の部屋かもしれないし、シェエラザードのいる場所なのかもしれない。わたしたちは、寝物語に語られる世界の中の一人物に過ぎず、ジャニが海の向こうへ行けなかったように、語り手によって世界に閉じ込められているのかもしれない。
 ハールーンたちのいる世界を一番内側、シェエラザードのいる世界がその外側、そしてさらに外側に「上田ひろみ」のいる世界があるとしたら、シェエラザードの言葉も、少し分かるような気がします。
 そう考えると、物語の外へ自由に飛び出していけるハールーンが、ちょっと羨ましいです。

 ところで、文庫版の表紙、とても好きです。
 読み終わったあとに見返すと、いろいろとこみあげてくるものがあります。 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー:現代
感想投稿日 : 2014年10月24日
読了日 : 2014年10月24日
本棚登録日 : 2014年10月24日

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