ローマ人の物語〈33〉迷走する帝国〈中〉 (新潮文庫 (し-12-83))

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  • 新潮社 (2008年8月28日発売)
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近年の日本政府も迷走し始めたローマ帝国には負けた。コロコロと

首相の首がすげ替わる日本を嘆いていたが、ローマでは僅か1年で

皇帝が5人も登場して去って行った。しかも穏やかならぬ去り方で。

軍団が自分たちの司令官を皇帝に推挙すれば、元老院はシビリアンを
帝位に据えようとする。内政の混乱は、外政へも影響を及ぼさずには
いられない。

以前のローマ帝国であれば暗殺された皇帝の始めたことでも、それが
合理的であるとなれば存続させた。しかし、次々と皇帝が倒れて行く
時代ともなると戦略面での一貫性も欠いて行くことになる。

そして、度重なる北からの蛮族の侵入に加え、アレキサンダー大王に
滅亡させられた「大ペルシアの夢をもう一度」で、ササン朝ペルシアが
ローマ帝国に戦いを挑む。

以前のローマ帝国であったのなら、講和を結ぶのは敗者とだけで

あった。それなのに、あと少しで勝てるところまで持って行きながら

勝敗もはっきりしないうちに相手と講和を結んでしまう。しかも、ローマ

が年貢金を支払うような屈辱的な講和なのだ。

余力がなくなった大国は、戦役を長引かせたくなかったのか。ローマ人が
ローマ人としてあった時代の誇り高さはどこへ消えたのか。

尚、ササン朝ペルシアとの戦役ではペルシア王の策略に引っ掛かり、
時の皇帝が生きたまま捕囚となっている。帝国始まって以来の屈辱に、
本国の元老院は「あの皇帝はいなかったこと」にしてしまった。

あぁ…こんなの、もうローマじゃないよ~~。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史(世界)
感想投稿日 : 2011年9月6日
読了日 : 2011年9月6日
本棚登録日 : 2011年9月6日

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