一瞬の夏(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.94
  • (81)
  • (99)
  • (77)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 903
感想 : 63
5

世界チャンピオンも狙えると言われたボクサー、カシアス内藤の
選手生命の終焉を描いた「クレイになれなかった男」から5年。
カシアス内藤がリングを去ってから4年半。ルポライターとしての
仕事の上で事実誤認からミスを犯した著者は、しばらく日本を
離れようとしていた。

友人との酒の席での他愛ない話の中で、思いもかけない
ニュースが飛び込んでくる。どうやらカシアス内藤がリングに
復帰するようだ…と。

夢が、再び前に進み始める。再起に掛ける元チャンピオン、
日本のボクシング界を語る時に忘れてはいけない名トレー
ナーであるエディ・タウンゼント、著者の友人である若き
カメラマン、そして、著者である沢木氏。

もう何度、本書を読んだだろうか。結末は分かっているんだ。
それでも、懸命にトレーニングをするカシアス内藤に感情
移入し、エディさんの厳しいけれど愛のある言葉に心を
鷲掴みされ、沢木氏の視点でカシアス内藤を眺める。

上巻はカシアス内藤の再起第一線までだが、沢木氏が
アメリカ・ニューオリンズへモハメッド・アリのリターンマッチ
を観戦する為に訪れる挿話が秀逸だ。

世界ヘビー級王者であるモハメッド・アリ。その本名である
カシアス・クレイからリングネームを名付けられた内藤。
ふたりのボクサーの再起が微妙にシンクロしている。

やっぱり上手いわ、沢木氏は。試合の描写も勿論だが、
スパーリングの描写を読んでいると目の前で内藤が
動いている錯覚に陥る。

結末は分かっている。それでも下巻を読むのが楽しみだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月19日
読了日 : 2014年2月13日
本棚登録日 : 2017年8月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする