天皇の影法師 (中公文庫 い 108-4)

著者 :
  • 中央公論新社 (2012年4月21日発売)
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感想 : 14
5

昭和天皇の崩御前後の、妙な空気は体験している。連日のご容態
報道、日に何度も行われるバイタル・データの発表。行き過ぎた
自粛ムードはCMの「お元気ですか?」の台詞までを消した。

そして、故小渕恵三が掲げた新しい元号「平成」の文字。

本書では大正天皇崩御の際に起こった東京日日新聞(現・毎日新聞)
の元号誤報事件が、晩年の森鴎外が執念を見せた「元号考」に繋
がって行く。

新元号は光文。東京日日新聞はどこよりも早く新元号を報じた。
しかし、蓋を開けてみると新元号は「昭和」に決まっていた。

世紀の大誤報と言われる事件はいかにして起きたのか。その後の
東京日日新聞社内の対応が詳細に綴られている。

そして、この誤報事件の真相は鴎外が「元号考」執筆の際に助手を
務めた吉田増蔵の話へと繋がって行く。

本来は天皇の棺を担ぐ八瀬童子について書かれたものを探して
いて本書を手にしたのだが、この元号「昭和」誕生の話は面白
かったなぁ。

勿論、八瀬童子がどのようにして時代を乗り切って来たのかも
興味深かった。でも、もっと詳しい資料はないのかな。知っている
方がいたら教えて下さい。

多くの資料と当時を知る多くの人に取材し、丹念に書かれている。
猪瀬直樹もこの頃の作品はよかったんだなぁ。

昭和の元号についてを読んでいるうちに、桐生悠々の「昭和よ」
ではじまる文章を思い出した。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 天皇・皇室
感想投稿日 : 2012年12月20日
読了日 : 2012年12月20日
本棚登録日 : 2012年12月20日

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