マインド: 心の哲学

  • 朝日出版社 (2006年3月1日発売)
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本棚登録 : 289
感想 : 20
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デカルトの心身二元論以来、精神と物質、意識と身体の相互の関係は哲学の一つの大きなテーマになっていた。著者は意識を物理的存在としての脳細胞とその神経回路が構成するシステムであるとの立場を取っていて、これは自分も素人ながら、同じ考えを持っていて同感するところが多かった。

 問題は意識が脳で構築されていたとしても、それがすなわち意識の必要条件になるわけでも必ずしもないことである。囲碁は19路に白黒の構成があればいいが、これは碁盤が木であろうが、ディスプレイであろうが、紙であろうが何で出来ているかに依存しない。同様に意識もその構成が、電子回路で出来ていても同じことが実現する可能性があることである。かといって、脳に変わる意識の構成物質が見当たらないことも事実である。

 また意識では一人称の意識ということも問題になり、またその一人称も自我に目覚めた一人称と自我の意識のない一人称の問題がある。また三人称としてもわれわれは壁一枚隔てて向こう側にいるものが意識を有する者であるかどうかを判断する能力があるかという問題もある(中国語の部屋)

 筆者は恐らく同意しないであろうが、地球表面の構造に意識感じることもあるだろうし、またそれを意識と呼べるのではないかという疑問もある。つまり、惑星レベルの大きさの知覚生物が地球を観測したときに夜間に煌めき、時を置いて表面が幾何学的に変化し、接近すればミサイルを持って抵抗し、衛星を飛ばしてこちらを観測する物体はそれ全体として意識性を感じるのではないかということである。

 これらはカントの意識の統一性という論とも絡んでくるだろう。カントは原典では読むことは自分ではとうてい無理だが、和訳で精読する必要があるが、まだ自分はその巨峰を昇る段階には来ていない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理
感想投稿日 : 2012年4月28日
読了日 : 2012年4月28日
本棚登録日 : 2012年4月28日

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