戦国人物伝 長宗我部元親 (コミック版 日本の歴史)

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  • ポプラ社 (2011年10月14日発売)
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色白でひよわなために「姫若子」とよばれた不遇な少年時代。
その姫若子が、初陣で手柄をあげるや、土佐を平定し、さらには四国を統一する! 
しかし秀吉がよこした、四国攻めの圧倒的な大軍にはなすすべもなく、
結局、その軍門にくだることになる――。
自由奔放かつ破竹の勢いで動乱の世を疾走した四国の雄、長宗我部元親。
夢半ばに終わった、その波乱の人生を描く。

戦国時代、全国的な騒乱は四国にも当然に及んでおり、土佐の国でも八家が入り乱れる群雄割拠の状態。
長宗我部氏はそのうちの一家でしたが、勢力としては最弱。
それを一躍躍進させたのが、元親の父・長宗我部国親になります。

元親はその国親の嫡子として生を享けますが、幼少の頃から「姫若子」とあだ名されるほど本ばかりを好み武芸をしないことで有名でした。
それ故か初陣も22歳と遅く、長宗我部家の将来を懸念されておりました。
ですが、その初陣で敵を次々と打ち破る大活躍。初陣の数か月後に病で父の国親が死去すると家督を相続して四国統一を目指す戦いに明け暮れます。

土佐は全土でも太閤検地で24万石とされるほどしか石高がなく、そういった意味で兵員動員能力には欠けるはずでした。
しかしそれを補ったのが「一領具足」という半農半兵制度です。
これは平時には農民として田畑を耕作していた者が戦の際には兵士として駆け付けるわけで、これにより領土の狭さの割には長宗我部家は大量の兵力を動員できたのです。

元親が家督を継いだ頃、中央では尾張の織田信長が桶狭間に今川義元を打ち破っており、元親はこの信長に妻の縁をつてに接近。
信長に嫡男の烏帽子親となってもらい、四国平定のお墨付きを得ます。
ですが、元親が四国平定を進め勢力を増すと信長はこれを危険視して約束を反故にし、四国一国のみで我慢するようにと申し渡して織田・長宗我部の両家の対立は深まります。
四国征伐の兵が準備できていた矢先、「本能寺の変」が起こり、信長は横死。織田家との対決は回避されました。
その隙を付いて元親は四国平定を急ぎますが、信長の後継者争いに名乗りを上げた羽柴秀吉と徳川家康との戦いにおいては家康に味方。
四国平定後に援軍を送るつもりだったのですが・・・・その前に家康と秀吉が政治的な和解をしてしまい、今度は単独で羽柴秀吉と戦わなければならなくなります。

中国の毛利氏もその頃には秀吉の傘下に入っており、四国の征伐軍は10万人にも及んでいました。
各地で打ち破られる長宗我部軍。敵わないと見た元親は降伏し土佐一国のみ安堵されて秀吉傘下に組み込まれます。
ですが、長宗我部家最大の不幸がその後の九州の「島津氏征伐」で発生します。
軍監である「仙石秀久」の無謀な戦略で元親の嫡子・信親が戦死してしまう。
期待されていた嫡男を失った元親の落胆は激しく、これが結果的に長宗我部家滅亡の引き金になってしまいます。

嫡男を失った元親は二男・三男を差し置いて四男の「盛親」を後継者に指名。反対する家臣団を粛清するなどしたため、長宗我部家の力は弱体化した。
元親自身は秀吉が亡くなった僅か1年後には病を得て亡くなる。享年62歳。奇しくも秀吉と同い年での没年であった。
その1年後、天下分け目の「関ヶ原の戦い」が勃発し、盛親は西軍に組したため土佐24万石を没収されてしまう。
盛親は当初は家康に組するつもりで使者を送ろうとしていたのだが、その使者が家康の元に辿り着けなかったため、西軍に加わるという態度。
しかも肝心の関ヶ原では毛利氏の後方に布陣していたため、動くことができないまま終戦を迎える。
何もしないで土佐一国を失ってしまったのだ。代わりに土佐24万石を山内一豊が得る。

盛親は大坂に潜伏して寺子屋の師匠などを務めて命を長らえ、大坂の陣で豊臣秀頼の要請に従って大坂城に入場。
そこそこ活躍したものの、落城後に捕えられて斬首され、ここに長宗我部家の嫡流は断絶した。

長宗我部家の勃興はそのまま「乱世の縮図」である。
成り上がることも難しいが、一度成り上がって獲得した領土・地位を守り通すことの難しさ。
嫡子・信親を失った後の長宗我部家のお家騒動が最終的な滅亡に繋がった。

その無念・恨みやいかばかりであっただろうか?土佐の「一領具足」たちも新領主・山内一豊に反抗して弾圧され、郷士という低い身分に落とされる。
郷士は山内家家臣の上士とは徹底的に差別され、憤懣やるかたなかった。
260年後の徳川末期、その蓄積された不満が爆発する形で土佐郷士の中から
・武知半平太
・坂本竜馬
らの英雄が飛び出して来るのである。長宗我部遺臣の無念の結実であろうか

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史_11戦国時代
感想投稿日 : 2016年1月18日
読了日 : 2015年1月12日
本棚登録日 : 2015年1月12日

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