『チェンジング・ブルー』を書いた大河内さんのやや軽めの地球物理学の解説本。まえがきに、「科学者が科学を題材にした随筆、あるいはエッセーと呼ばれるものを書くことには、実は少なからず抵抗がある。限られた時間をどのように過ごすべきかと考えた時、これが本当に正しい選択なのか?というジレンマに直面するからだ」と書く。アウトリーチ活動というらしいが、こういった著作が学者としての査定に影響することはないそうだ。それでも一般の人に科学に触れてもらえればと考えているとのことのようだ。池谷裕二さんも『単純な脳、複雑な「私」』で同じようなことを書かれていた。本を読む方としては、感謝をして読むべきなのかもしれない。そして何かを得らればよりよしとする。
本書で扱われるテーマは地球物理学と呼ばれる分野からとられている。「海」「海底」「白亜紀の地球」「南極」「海面の上下」「塩」「地中」などが、億年単位の長期間の地球の歴史の中で語られる。個人的感想としては、より科学的な側面が強く、それがゆえ著者の意志が込められていた『チェンジング・ブルー』の方が面白かった。ただ、極地探検の現実(アムンセンやスコットの名前は小学生以来かもしれない)や海面の上下による東京の地形などは知らなかったことを知ることができるという楽しさがあった。そして、何より読みやすい。そこには、読みやすくしよう、読者にきちんと伝えようという意志が感じられる。おそらく結構時間がかかっているんではないのかと思う。だからこそ、まえがきにそういうことを書いてしまうんだろうなと。
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『チェンジング・ブルー――気候変動の謎に迫る』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4006032803
『単純な脳、複雑な「私」』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4255004323
- 感想投稿日 : 2017年1月6日
- 読了日 : 2017年1月3日
- 本棚登録日 : 2017年1月3日
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