そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命

  • 早川書房 (2007年10月25日発売)
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感想 : 18
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量子力学が生まれ、確立していくまでの過程で出てきたキラ星がごとく輝く科学者たちのヒューマンヒストリーを綴った一冊。特に原題の副題("Uncertainty - Einstein, Heisenberg, Bohr, and the Struggle for the Soul of Science")にある通り、ソルヴェー会議での熱い議論を中心にしたアインシュタイン、ハイゼンベルグ、ボーアの3人を中心とした中盤で描かれる論争戦は、量子力学がほぼ確固とした理論として受け入れられた現在から見ると滑稽なところがあるのも含めて、人間的でかつ印象的である。それにしても、この当時の人は、よく手紙を書いていたんだなと思う。また、こうやって後の世で私的書簡が公開されるのも不思議。今の世ならEメールやSNSなので、もっと話が早かったのかもしれないですね。

なぜ今更、量子力学なの?というテーマに関する疑問はあるが、サイモン・シンなどが開拓した、特定の有名な科学的テーマを巡った人間模様をきちんとした科学知識の背景を押えて書くという、サイエンスライティングの一分野として広がっていけばよいと思う。

前提知識の過多に影響されるので、好き嫌いはあるかと思うが、私としてはとても楽しんで読めた本。

タイトルが原題と大きく違っているが、キャッチーで味のあるもので個人的には好き。でも、やはりハイゼンベルグだけでなく、アインシュタインとボーアも同じくらい主役級なので副題に含めてほしかったな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2009年12月26日
読了日 : 2008年7月26日
本棚登録日 : 2008年7月26日

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